生きる為のひとつ

趣味で小説を書く者です。

暇つぶしの文

大学時代帰りの電車は全く人がいませんでした。

そんな時書いた文がメモに残って居たので載せておきます。

 

 

私の斜め前に、男が座った。
じっと、私の方を見た。
男は誰かに似ていたのだが、すぐには思い出せず、私はどうしていいか解らず、ただ目を反らすことしかできなかった。
彼がなぜ私を見ているのか。
私の顔になにかついているのかと思い顔をハンカチで拭ってみたけれど、何事でもなかった。
ではなぜ、男は私の顔を見ているのだ。
私は男の顔を見続けることを決意した。
男がまだこちらを見ているかは解らない。
私は心に決め、男の顔を見ると歯を出して笑っていた。
やはり、この顔はどこかで見たことがある。
電車のこの車両は、私と男しかいない。
二人だけの空間に、笑顔は妙に奇怪であった。
ガタガタと揺れながら、海辺の駅に差し掛かったところで、私はこの男の顔に似た人物を思い出した。
兄だ、兄に似ている。
ガサガサの肌や服装は似ていなかったが、なんだか似ていた。
兄が歳老いたらこうなってしまうのだろうか、そう考えた。
そう考えると歳老いた兄は好かない。
私はみすぼらしいからといって偏見を持つような人間ではなかったが、その男はなんだか奇妙で気持ちが悪かった。
なんなんだ、この吐き気は。
この男は兄とは別人なのに、なぜか兄と重ねてしまう。
自分で男を兄だと想像したのに気持ちが悪いとは、私は最低だ。
本当は、最初からこの男は私を見つめていたのではない。
私が知らぬ間に男を見つめていたのだ。
だから男も私に気付き彼なりに微笑んだのだ。
自意識過剰で相手に申し訳ない感情を抱いてしまった。
そんな自分自身を気持ちが悪いと思った。

 

 

暇つぶしに書いた文のようです。

こうして暇つぶししていたんだな〜と思うとなんだかおかしくなりますよね。

 

ではまた。

 

@harukisn